肩の付け根を動かすときに必要となる骨、それが鎖骨・胸骨・肋骨・上腕骨・肩甲骨です。
今回は肩関節を構成するこの5つの骨について紹介していきます!
肩ってひとつじゃないの?
五十肩とか聞くけどどこまでの骨が肩なの?
いまいち肩のことって分からないんだよなー・・・
などのような疑問・悩みを抱えているかたの参考になれば幸いです!
また、人体について興味のある方もぜひ見ていってください!
ここからは肩に関係する骨の解剖や機能などについて紹介していきますね!
肩の関節をつくる鎖骨・胸骨・肋骨・上腕骨・肩甲骨
みなさんは「肩をうごかす」と聞いたらどういうのを想像しますか?
大体の人は腕を上げるイメージがほとんどでしょう。
しかし、肩関節が動く際、ただ腕の骨が上がるだけでなく鎖骨・胸骨・肋骨・上腕骨・肩甲骨が一緒に動くことで腕を天井へ向けたり、物を取ったりすることができます。
この記事ではそれぞれの骨について形や役割を説明していこうと思います!
首元にあるS字状の形をした鎖骨
鎖骨はちょうど首元にある骨で、美容でいうデコルテにあたる部分です。
鎖骨周囲のリンパの流れを良くするなどでよく聞きますね?
鎖骨まわりには血管やリンパ、神経などもあるので人体には必要な骨です。
ここでは鎖骨の解剖と機能に分けて説明していきましょう。
S字状の長い棒状の鎖骨の解剖について
鎖骨は首元にあるS字状のゆるいカーブをした骨で、皮膚の上から鎖骨のほとんどが触れられます。
鎖骨は肩側にいくと太く平たくなり肩峰端となり、まんなかから胸元にかけては前方にカーブしていって胸骨端となるのが特徴です。
大人だと約12~15㎝の長さといわれています。
また、体幹と唯一結合する骨で内側の部分は胸骨端で胸骨とつながり、関節をつくります。
さらに外側の肩峰端では肩甲骨の肩峰と関節をつくって、肩甲骨の動きを補助していく形をとることが可能です。
鎖骨を触ってみると感じられると思いますが、皮膚がツルツルと鎖骨の上を滑らかに動きますよね?
これは鎖骨の上面が滑りやすい質感になっているからで、それ以外の部分は粗く少し動きにくい状態なのです。
鎖骨はこのようにS字状のカーブを描き、肩甲骨と関節、胸骨と関節をつくり、皮膚の上を動きやすい質感になっているのが特徴となります。
このS字状の形も鎖骨の機能として意味があるので覚えておきましょう!
血管・神経の保護などを行う鎖骨の機能
さて、鎖骨はなぜまっすぐではなくS字状の形をとらなければならなかったのでしょうね?
また、なぜ鎖骨の上面はツルツルしているのでしょう?
ここでは鎖骨の機能について説明していきます。
鎖骨は胸骨と関節をつくることにより、体幹とつながることができますが、鎖骨はこれを支点として約60°まで開く円錐運動が可能です。なかなか広いですね。
胸骨と支点をつくっているため、鎖骨の肩峰端は自然とやや上を向くこととなります。
この支柱は最終的に肩峰端でつながる肩甲骨を吊り下げる効果としても発揮され、肩全体を支えるという地味に大きな役割を担うのです。
鎖骨の上面がツルツルするのはこの鎖骨の運動に必要で、皮膚に近い鎖骨がツルツルしないと肩を動かすときなどに滑らなくなり、運動が円滑に行えなくなります。
肩の動きを制限しないようにするために鎖骨の上面は滑らかになっており、触ってもツルツルするのです。
また、S字状の形をしている理由に関しては主に血管や神経の保護・防御をするための形だといわれています。
また、深部にある血管や神経の保護だけでなく、筋肉の付着部としての提供、肩甲骨の筋力伝達の補助など様々な機能を備えているのが特徴です。
このように骨として小さな存在でも人体にとって重要な役割を持っているのが鎖骨の機能となります。
鎖骨って意外と大切な部分なんですね!
【参考文献】
著者/竹内修二.好きになる解剖学Part2.講談社サイエンティフィク.2007.98-99P
監修/竹内修二,著者/松村天裕.カラー図解骨のしくみ・はたらき事典.西東社.2011.40P
著者/日野原重明.系統看護学講座専門基礎Ⅰ人体の構造と機能[Ⅰ]解剖生理学第6版.医学書院.2004.57P
著者/竹内修二,編集/中村雅彦.新クイックマスター解剖生理学改訂第2版.医学芸術社.2006.47P
著者/Rene Cailliet,著訳/荻島秀男.図説運動器の機能解剖.医歯薬出版株式会社.2003.108P
編著/中村隆一,著者/齋藤宏,長崎浩.基礎運動学第6版.医歯薬出版株式会社.2007.207P
監訳/坂井健雄,松村讓兒.プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系.医学書院.2009.212P
原著/Carol A Oatis,監訳/山崎敦,佐藤俊輔,白星伸一,藤川孝満.オーチスのキネシオロジー身体運動の力学と病態力学[原著第2版].ラウンドフット.2016.127P
原著/D・A・Neumann,監訳/嶋田智明,平田総一郎.筋骨格系のキネシオロジー.医歯薬出版株式会社.2010.100P
著者/信原克哉.肩ーその機能と臨床第4版.医学書院.2012.15,21P
訳者/越智淳三.解剖学アトラス第3版.文光堂.2007.57P
上半身のまんなかに存在する胸骨
ちょうど、のど仏の下にある骨で体幹の骨でもあるのがこの胸骨。
救命講習、人工呼吸において心臓マッサージをする際に押すのがこの部分となります。
よく胸骨圧迫ともいいますね。
胸骨もまた、体幹の骨でもありながら肩を動かすときに関係してきます。
それでは胸骨の解剖と機能について紹介していきます!
3部からなる平たい胸骨の解剖
体幹の骨でもある胸骨は細かく3部になります。
胸骨柄・胸骨体・剣状突起に分けられ、それぞれが結合して扁平な胸骨となるのです。
胸骨柄はちょうど胸骨の頭のような部分になるところにあたり、上縁は胸椎の2番目の高さとなります。
胸骨体は胸骨柄の下にあって、平たく上下に長いのが特徴です。
また、胸骨体は男性のほうが女性よりも長くなっているといわれています。なんででしょうかね?
そして剣状突起は胸骨体の下にある軟骨性の突起で、ちょうどみぞおちの上に存在する固い部分が剣状突起先端です。
ちなみに剣状突起は押すと痛いです(笑)
むやみに押したり、叩いたりするのはやめましょうね!
様々な骨とつながる胸骨の機能
胸骨は体のほぼ中心にある小さな骨ではありますが、鎖骨や肋骨と関節をつくり支えになったり運動の基点になりやすいのが特徴です。
胸骨柄には1対の楕円形の関節面があります。ここは鎖骨と関節を形づくり、鎖骨を支える部分です。
胸骨柄・胸骨体には肋骨もつながります。
肋骨とつながることで内臓を守り、呼吸運動などにも関与してきます。
また、もちろん肩の運動でもわずかに関与して、若干動きがあるのが特徴です。
胸骨は基本的に支える骨と理解してもらえばよいですよ!
【参考文献】
著者/竹内修二.好きになる解剖学Part2.講談社サイエンティフィク.2007.108P
監修/竹内修二,著者/松村天裕.カラー図解骨のしくみ・はたらき事典.西東社.2011.83P
著者/日野原重明.系統看護学講座専門基礎Ⅰ人体の構造と機能[Ⅰ]解剖生理学第6版.医学書院.2004.56P
原著/D・A・Neumann,監訳/嶋田智明,平田総一郎.筋骨格系のキネシオロジー.医歯薬出版株式会社.2010.100P
訳者/越智淳三.解剖学アトラス第3版.文光堂.2007.35P
あばら骨にあたる肋骨
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いわゆるあばら骨と表現するのがこの肋骨です。
肋骨は左右12本ずつあり、合計24本で成り立ちます。
この肋骨が無ければ人間は心臓や肺などは守れません。
そんな大事な肋骨の解剖と機能について紹介していきます!
あばら骨である肋骨の解剖
「あばらが痛い」などといったときに指すのがこの肋骨です。
肋骨は体に対して左右に分かれており、片側12本の計24本が人体に備わっています。
胸骨や胸椎とともに胸郭という鳥かごのように内臓を保護しており、肋骨は鳥かごでいう骨組みの部分にあたります。
また、肋骨はすべてが同じ大きさ、組織ではありません。
肋骨には真肋・仮肋・浮遊肋という細かい分類となり、分けるのです。
画像には真肋・仮肋が書いてありますね。
真肋は上から1~7本の肋骨を指し、胸骨に向かう途中で軟骨に変わって関節をつくります。
1番目の肋骨は触れませんが、弯曲が最も強いのが特徴です。
仮肋は8本目~12本目の肋骨を指し、真肋とは違って前側が胸骨には直接くっつかないのが特徴です。
また、浮遊肋というのは仮肋のうち11本目~12本目をいいます。
肋骨って全部体にくっついているんじゃないんですねー!
知りませんでした!
呼吸や肩を上げる際に動く肋骨の機能
さて、肋骨は肩関節に対してどんな役割を持っているのでしょうか?
まず肋骨と聞いてイメージできるのは呼吸運動ですね?
もちろん呼吸運動にも関与します!ですが、肩の運動にも若干関わってくるのです。
手を挙げてみると上にいけばいくほど肋骨は持ち上がり、はと胸のようになりますよね?
そうです。肋骨は腕を上げる終盤に近づくにつれて徐々に肋骨が広がり、上を向くのです。
これは胸椎の動きとの関係がありますが、腕を上げていくと背すじが伸びなければ上がらなくなります。
その際に胸椎が伸び、肋骨が広がることで真上まで上げることが可能なのです。
胸骨といい肋骨といい肩の運動には必要なんですね・・・むむむ・・・
胸椎を知りたいからは上記の記事も参考にどうぞ!
【参考文献】
監修/竹内修二,著者/松村天裕.カラー図解骨のしくみ・はたらき事典.西東社.2011.84P
著者/日野原重明.系統看護学講座専門基礎Ⅰ人体の構造と機能[Ⅰ]解剖生理学第6版.医学書院.2004.55-56P
二の腕の骨となる肩関節において代表的な上腕骨
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腕といえばこの二の腕といわれるくらいの代表的な部位、上腕骨です。
腕と言われて、一番知覚しやすく認識しやすいですよね?
皆さんが意識して動かす際にはとっても分かりやすい部分。
上腕骨が無ければ「肩を動かす」ことは難しく感じるかもしれません。
そんな上腕骨についてここでは解剖と機能を説明していきましょう。
ドーム状に近い形をしている上腕骨の解剖
肩の付け根となる上腕骨は肩甲骨と関節をつくりますが、その形は半分球状の形をしており、少しドームに近い印象を得ます。
この丸い部分を上腕骨の頭となるので上腕骨頭と呼び、肩甲骨の関節窩と関節し、肩関節を形成します。
ここから下に伸びていくとくびれがあります。このくびれた部分を解剖頚、そのちょこっと先のくびれを外科頚といいます。
ここは高齢者でも折れやすい部分でもあり、腕を骨折した際の好発部位として有名です。
上腕骨の外側にはこぶ状に盛り上がった部位がありますが、この部分を大結節とよび、その内側を小結節とよびます。
このように、上腕骨の肩関節の付け根でも細かい部分に名前が付けられており、それぞれに意味があります。
今度はその機能について紹介しましょう。
様々な組織が通過し、筋の付着部ともなる上腕骨の機能
上腕骨の機能は主に筋肉の付着部としての役割や神経、血管を通過させます。
特に付着する筋肉は
付着する部位 | 付着する筋肉 |
---|---|
大結節 | 棘上筋、棘下筋、小円筋 |
大結節稜 | 大胸筋 |
小結節 | 肩甲下筋 |
小結節稜 | 広背筋、大円筋 |
となります。
このように多くの筋肉が付着し、色々な筋肉が肩を動かそうとするのです。
また、この大結節と小結節の間にある結節間溝という部位を上腕二頭筋長頭腱が動きやすいように存在したり、神経の溝となる部分もあることから、ただ動かすだけでなく他の組織も守りながら動かせるようになっていることがうかがえるでしょう。
詳しい関節としての機能などは別の記事で紹介しますね!
【参考文献】
著者/竹内修二.好きになる解剖学Part2.講談社サイエンティフィク.2007.122P
監修/竹内修二,著者/松村天裕.カラー図解骨のしくみ・はたらき事典.西東社.2011.44-45P
著者/竹内修二,編集/中村雅彦.新クイックマスター解剖生理学改訂第2版.医学芸術社.2006.48P
監訳/坂井健雄,松村讓兒.プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系.医学書院.2009.217P
原著/Carol A Oatis,監訳/山崎敦,佐藤俊輔,白星伸一,藤川孝満.オーチスのキネシオロジー身体運動の力学と病態力学[原著第2版].ラウンドフット.2016.131P
原著/D・A・Neumann,監訳/嶋田智明,平田総一郎.筋骨格系のキネシオロジー.医歯薬出版株式会社.2010.103P
著者/信原克哉.肩ーその機能と臨床第4版.医学書院.2012.19P
監修/林典雄,筆者/赤羽根良和.肩関節拘縮の評価と運動療法.運動と医学の出版社.2014.3P
背中側にある逆三角形の肩甲骨
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昔から「貝殻骨」といわれている骨、それが肩甲骨です。
この肩甲骨は肩を動かす際には非常に重要な部分となる特徴があります。
そんな大事な肩甲骨の解剖と機能について紹介していきましょう!
平たく逆三角形をした肩甲骨の解剖
肩甲骨は平たい形をしており、なおかつ逆三角形をつくっているという独特な形状をしています。
この肩甲骨は背中に存在し、6つの肋骨にくっつくような関係にみえるのですが、実際のところは若干筋肉の厚みで浮いているのが特徴です。
肩甲骨には鎖骨とつなぐ肩峰という部分があり、それは肩甲骨からニョキっと生えているまっすぐな棒状のがありますよね?
そこの先端が肩峰となり、鎖骨の肩峰端と関節をつくります。
ここが唯一肩甲骨がつながれる部分でもあり、この鎖骨との関係がなくなると役に立たなくなります。
ホントです(笑)
上腕骨とも肩甲骨はつながっていますが、実際はくっついているというよりも別の組織が近づけているため、常にくっつきあっているというわけではありません。
また、肩甲骨には「カラスのくちばし」に似た形から烏口突起という部分があり、そこには靭帯や筋肉が多く集まって付着しています。
さながら駅のターミナルのような場所です。
このように、肩甲骨には様々な場所で他の骨と関係したり、筋肉や靭帯が多く付着するような構造となっているのが特徴ともいえます。
鎖骨や上腕骨を介してコントロールする肩甲骨の機能
肩甲骨の機能は非常に優秀で、肩を上げる動作では一役も二役も買うことがあります。
肩甲骨は背中についている骨ではありますが、実際は肩を動かすときに上腕骨や鎖骨との足並みをそろえ、一定のリズムで徐々に変化していくのが特徴です。
特に肩甲骨には大小さまざまな筋肉がつき、腕の運動や姿勢にまで影響を与えるなどの幅広く関係してきます。
肩甲骨は腕を上げたり、横に広げたり、手を伸ばしたりなどの動作で3D空間で柔軟な動きを繰り返し、上腕骨や鎖骨が円滑に動きやすいほうへ持っていってくれるのです。
姿勢に関しては背骨である脊柱との関係性もあり、肩甲骨を寄せれば姿勢が伸び、外側に出せば姿勢が丸くなるなど肩甲骨の動きを意識するだけでも姿勢変化は可能となっています。
このように、肩甲骨は肩関節への影響だけでなく姿勢の柱である脊柱にも影響を与えるのが特徴です。
脊柱について知りたい方はこちらの記事も参考にどうぞ!
【参考文献】
監修/竹内修二,著者/松村天裕.カラー図解骨のしくみ・はたらき事典.西東社.2011.42-43P
著者/日野原重明.系統看護学講座専門基礎Ⅰ人体の構造と機能[Ⅰ]解剖生理学第6版.医学書院.2004.57P
著者/竹内修二,編集/中村雅彦.新クイックマスター解剖生理学改訂第2版.医学芸術社.2006.47-48P
著者/Rene Cailliet,著訳/荻島秀男.図説運動器の機能解剖.医歯薬出版株式会社.2003.108P
原著/Carol A Oatis,監訳/山崎敦,佐藤俊輔,白星伸一,藤川孝満.オーチスのキネシオロジー身体運動の力学と病態力学[原著第2版].ラウンドフット.2016.127P
原著/D・A・Neumann,監訳/嶋田智明,平田総一郎.筋骨格系のキネシオロジー.医歯薬出版株式会社.2010.103P
著者/信原克哉.肩ーその機能と臨床第4版.医学書院.2012.16,19P
監修/林典雄,筆者/赤羽根良和.肩関節拘縮の評価と運動療法.運動と医学の出版社.2014.9P
編著/整形外科リハビリテーション学会.改訂第2版 関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーションー上肢・体幹.メジカルビュー社.2014.3-4P
訳者/越智淳三.解剖学アトラス第3版.文光堂.2007.56P
【結論】肩関節に関わる骨は意外と多く重要!
お疲れ様でした!最後まで読んでいただきありがとうございます!
肩の骨って思ったより数が多いんですね!鎖骨も肩の骨に含まれるのは知りませんでした!
そうですね。でも今後関節のお話をする際にも鎖骨や胸骨の話は関係してくるので肩の記事に含めました。実際必要ですしねー
そうなると、色々な種類の関節が関係してくるんですかね?
骨が多いということはそれだけ関節も多くなりますし・・・
療子さんは察しがいいですね(笑)
そんな関節の記事は別記事で説明したいと思いますので今回はここまで!
不完全燃焼ですが、複雑になるのでまた別の機会ですね・・・
それでは皆さんお疲れ様でした!
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