皆さん変形性膝関節症はご存じでしょうか?
変形性膝関節症は日本では発症する人が多く、整形外科の中でも膝の症状において診断がされやすい疾患です。
変形性膝関節症のことは名前や症状について知ってはいるが実際にどのような治療をしているかまではなかなか浸透していないのも事実です。
なので今回は変形性膝関節症に対しどんな治療が病院で行われているのかを紹介していきたいと思います。
- 変形性膝関節症ってどんな治療するの?
- 手術はどんな効果があるの?
- 何を基準に治療していくの?
上記について一つずつ答えていきたいと思います。
あと注射ですかね?
ではそれらについてとその他の治療も紹介していきます!
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保存療法について
保存療法とは手術を必要としない、あるいは手術法のない膝関節疾患の全てに対処するための方法であり、この保存療法は90%以上の症例に効果が期待できます。
変形性膝関節症で受診する患者さんの大部分は初期から半ばにかけて進行した変形性膝関節症であり、緩やかに進行していく疾患ですのでこの初期から半ばの変形性膝関節症に対する治療が重要になります。
そのため保存療法の目的は以下のようになります。
- 変形性膝関節症の痛みや炎症を減らす
- 変形性膝関節症の進行の防止・スピードの抑制
①に関しては主に鎮痛剤や抗炎症薬などの薬の投与や注射による関節内注入にあたり、②に対しては変形性膝関節症の進行や症状を改善するために理学療法士による運動療法が適応になります。
これら以外にも患者さんへの生活指導、肥満の体重減量とコントロール、杖を処方などもされたり、装具療法というサポーターや足底版で症状をコントロールすることができます。
薬物療法
薬物療法とはそのままの通り薬を利用して症状にアプローチする方法です。
経口摂取による投与、湿布などの外用剤、注射がこれらに含まれ、方法として以下に示します。
- 非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の内服、外用剤の使用
- ヒアルロン酸注射による関節内投与
非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)
非ステロイド抗炎症薬は痛み止めとして使用され、一般的の薬としてボルタレン錠、ロキソニン錠がこれにあたります。処方された際の長所と短所を分けてみます。
経口摂取なので簡単に自分でも行えるため仕事の時や運動が多い時など場面を選んで薬を飲むことも可能です。もちろん医師から許可を得ることは必要ですが・・・
ただやはり効果は限定的なもので関節痛には効きますが、筋肉痛には効かないのが難しいところですね。また、関節軟骨のすり減りも抑えてくれるわけではないので大きく将来に期待はできません。あくまで対症療法になります。
なのであまり重症化した変形性膝関節症には処方されにくいのが現状です。
ヒアルロン酸注射
変形性膝関節症にたいしてもっとも多く用いられるのがヒアルロン酸注入による関節内注射にです。ヒアルロン酸は人体の関節内にもともと存在するのですが、変形性膝関節症の患者さんはヒアルロン酸が少なくなっています。
そのため関節内にヒアルロン酸補充の意味で行われます。ヒアルロン酸は関節内での衝撃吸収作用があるのでこれにより関節軟骨の消耗を緩やかにするのです。
ヒアルロン酸の具体的な効果としては
- 軟骨のカバーの役割・保護作用
- 軟骨破壊による活性酵素の抑制作用
- 軟骨の代謝を向上させる作用
- 痛み物質を抑えて痛みを感じにくくする作用
などといった作用から症状を減らしていくのが目的になります。
また、長期と短所としては
ヒアルロン酸には関節の滑りを良くする効果、炎症を抑える作用、痛みの感覚を改善などがあります。ただ上記のような場合だと効果は適切にありますが重症化すると効果が実感できないでしょう。
また、二週間に一回、月に一回などと定期的に注射で打たないといけないので注射嫌いには苦痛だと思います。
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理学療法
理学療法によって患者さんのリハビリを行います。その際に運動療法を行うことにより痛みの軽減、生活動作における障害を減らしていくのが目的です。
理学療法士がリハビリするときに診ていくのは以下の通り
- 現在の症状はいつからどれくらい現れているか
- 生活でどのような動作に制限がでているか
- 生活の満足度は今どれくらいか
- 誤った動作が習慣化されていないか
ごく一部ではありますが症状を通して患者さんの生活背景にまで密着して運動、生活指導を行っていきます。理学療法士は病態や数々の評価・検査から得られた所見が患者の動作制限とどのような関連をもって変形性膝関節症の進行に関係しているかを考えながら理学療法を進めていきます。
処方としては大腿四頭筋の筋力強化をしていきますが、変形性膝関節症の発生メカニズムなどから膝関節以外の股関節、足関節、足部を含めた身体全体からのアプローチも行っていきます。
生活指導としては立ち上がりや歩行、階段の上り下りの正しい行い方や症状を減らす動きを指導し、本部位へのストレス軽減、変形性膝関節症の進行を抑えるのが最大の目的です。
このようにして理学療法士が変形性膝関節症に対して運動療法を行っていきます。
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外科的治療について
外科的治療は手術を表します。治療選びは医師によって行われ最初に選ぶ多くは保存療法ですが、保存療法の効果が期待できない場合は外科的治療つまり手術が選ばれます。
変形性膝関節症の手術としてはレントゲン画像による病態の進行度・変性の程度のみならず患者の年齢活動性、患者のニーズを考えて手術の方法を考えます。
- 薬、注射による効果が良くない
- 痛みの改善がみとめられない
- 生活動作の制限が増えて進行している
- 積極的に運動療法や保存療法を行っても症状が悪化する
などの経過がみられた場合は医師が手術を選択することがあります。
関節鏡視下手術(半月板切除術)
初期から中期の変形性膝関節症に行うことが多い。関節鏡視下手術は傷口を小さく切るため負担が少なく、症状も軽くできます。鏡視下で関節内の様子も観察できるため、今後の治療計画が立てやすいのも特徴です。
関節鏡視下手術の適応目安を下記に示しました。
- 内側もしくは外側に限局
- 年齢制限は特になし
- 半月板損傷による症状がある
- 比較的関節の動きが良好
- 軽い内反変形(角度が180°程度)
- 不安定性が軽度
- 重度肥満ではない
関節鏡視下手術は損傷した半月板の不安定な断片を鏡視下で取り除き、二次的な関節軟骨の障害を予防することが目的となります。
ただし短所として
などがあります。
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人工膝関節全置換術(TKA)
人工膝関節全置換術は末期の変形性膝関節症にたいして確立された手術です。人工膝関節全置換術は変形性膝関節症による関節破壊が進んだ症例に用い、膝関節の軟骨が消失して徐々に変形が進行して長期間の膝の痛みに患者さんが悩んだ末に行います。
人工膝関節全置換術には2種類あり、下記の表にまとめました。
タイプ | 具体的内容 |
---|---|
PS型 | 後十字靭帯を切除し人工関節の形状により安定性を得る。可動域も良好で長期的な成績優れているデザイン |
CR型 |
後十字靭帯を残し、脛骨自体かつ荷重していないときの安定性が良く骨へのストレスも減らせる。関節の感覚も向上し、階段も可能。 |
人工膝関節全置換術はその形態により安定性を得ているので体重をかけることで安定性が得られます。適応条件と長所と短所は以下に記載しました。
- 末期の変形性膝関節症
- 内側と外側どちらも変形している
- 膝関節の可動域制限が強い
- 年齢が60~65歳以上
人工膝関節全置換術は重症化した変形性膝関節症に行うものですがその効果も期待が大きく、上記のもの以外にも歩行能力を著しく改善させたり痛みも除去できてしまいます。
最大の目的は除痛効果による生活の満足度の改善になるので多くの面で期待ができるでしょう。
膝関節周囲骨切り術(AKO)
膝関節周囲骨切り術ではももの骨である大腿骨、すねの骨である脛骨のどこに変形があるかを見極め、その変形部位に対する矯正を行うことにより、下半身の軸を調整して変形性膝関節症の症状を減らしたり、進行の予防を行う手術です。
この手術は膝周囲の大腿骨、脛骨に変形がある場合がほとんどであります。また種類が多いため選択方法として変形する異常の原因部位、変形の中心、矯正角度、年齢、活動性を考慮し行います。
また、喫煙や骨が弱い骨粗鬆症、糖尿病などがある患者さんに対しては骨がくっつく時間が早いかどうかも計算に入れて手術を選ぶのが特徴です。
- 内側の変形異常に限定
- 50~60歳代
- 膝蓋大腿関節(お皿の下の空間)が正常
- 10°~90°以上の可動域
- 中等度までの内反変形(190°~195°以上)
- 著しい不安定性がない
上記の条件が当てはまった際に膝関節周囲骨切り術を選ぶことはありますが、さっきも言ったように種類がたくさんあるためさらにその中から手術法を選びます。
以下に少しまとめて書きました。
- open wedge HTO:脛骨内側より脛骨粗面で骨切りし、外に反らし骨切り部を開く。荷重軸を外側に逃がす
- closed wedge HTO:脛骨外側より骨片を切り取って外に反らし骨切り部を閉じる。荷重軸を外側に逃がす。骨癒合に有利。
- hybrid HTO:①、②の両方を行う手術。荷重軸を外側に逃がし、骨切除量が少なく、膝蓋大腿関節のストレスも少ない
- tibial condyle valgus osteotomy:脛骨顆外反骨切り術。脛骨内顆の骨切りとすねを外に反らすことで荷重軸を外側に逃がす。
- medial closed wedge DFO:大腿骨内側より骨片を切り取り、内に反らして骨切り部を閉じる。荷重軸を内側へ逃がす。
- lateral closed wedge DFO:大腿骨外側より骨片を切り取り、外に反らして骨切り部を閉じる。荷重軸を外側へ逃がす。
- medial open wedge DFO:大腿骨内側より骨切りし、外に反らし骨切り部を開く。荷重軸を外へ逃がす。
- double level osteotomy:脛骨・大腿骨の両方で骨切り術を行う。
英語ばかりでかなり見にくいですがこのように方法が豊富に分かれています。
特にHTOという手術に関しては痛みの改善、軟骨の変性を防ぐ手術であり、O脚の変形、X脚の変形を伴う時に変形を矯正して荷重のバランスを均等にします。手術の成績も良いですが体重をかけるためには期間を設けないといけなく3か月要するため、高齢者には不向きなのがデメリットです。
そのため比較的若い患者さんで変性がまだ関節全体に及んでいない場合には骨切り術を選択します。
結論:軽度なら保存療法、重症なら手術になることも!
途中から内容がマニアックでしたがどうでしたでしょうか?
手術って一つだけだと思ってました。
HTOをよく行う病院もあればTKAしかしない病院もあったりとです。
まあそれはそうですよね!
これで膝関節編は一旦終了になります!
次回からは何を中心に話していくのでしょうか?
また新しく一新していきましょう!
分かりました!それではまた会いましょう!
お疲れ様でした!
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