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肩の動きをなめらかに、そして自由自在の可動域を持つのに必要なのが肩に存在する複数の関節、胸鎖関節・肩鎖関節・肩甲胸郭関節・肩甲上腕関節・胸肋関節。
これらのほとんどの関節のうち1つでも異常をきたした場合、正常に肩を動かすのが困難になります。
今回はそんな肩関節の構造や機能について紹介していきます!
最近肩の勉強しているけど、いまいち整理がつかない・・・
肩こりとか聞くけど、関節と関係あるのかしら?
肩をしっかり動かしなさいと言われたけど、どう動かせばいいのかしら?
などなど疑問・悩みのある方は参考にどうぞ!
また、肩の解剖機能に興味があったり、勉強したいというかたも参考になれば幸いです!
肩関節を構成する骨について知りたい方はこちらの記事も参考にどうぞ!
唯一体幹と連結している胸鎖関節
胸鎖関節は胸骨と鎖骨によって構成される体幹をつなぐただ一つの関節です。
小さい関節ではありますが、無ければ肩が大変なことになっちゃいます(笑)
そんな胸鎖関節の解剖と機能について焦点を当ててこの項目では紹介していきましょう!
【解剖】胸鎖関節は靭帯によって補強されている構造
鎖骨と胸骨をつなぐ馬のくらのような形をした関節、胸鎖関節。
この関節は、見た目ほとんど動かなさそうな感じを受けますが、実際は大きく運動が可能です。
ゆるい関節包にくるまれており、関節の間には関節円板というクッションが備わっており、地味に動きがでやすいように調整されています。
また、ゆるい関節包のためか、安定性を保つために靭帯によっていたるところに付着しており、自由に動きすぎないようにというのもポイントです。
こんな感じで、動ける関節なんですが、動きすぎないように靭帯で調整されているのが特徴の関節となります。
では胸鎖関節の機能はどうなのかをみていきましょう!
【機能】胸鎖関節は安定性と運動経路の誘導を行う
さきほど、胸鎖関節の運動範囲は大きいと言いましたね?
胸鎖関節は靭帯で補強されているとはいえ、それなりの範囲を確保しており、上下左右・ひねり運動など3Dな運動を行えます。
体幹と連結している関節であるため、その運動範囲は広く、このため肩の運動にも大きく関係して運動しやすいように経路の確保・誘導をしてくれるのです。
このあとに説明します肩甲胸郭関節の動きにも直接関与してくる関節なので大事な関節となりますね。
あまり聞いたことがありませんが、地味に大切な関節ですね!
【参考文献】
監修/竹内修二,著者/松村天裕.カラー図解骨のしくみ・はたらき事典.西東社.2011.26P
監修/富士武史,共著/河村廣幸,小柳磨毅,淵岡聡.ここがポイント!整形外科疾患の理学療法改訂第2版.金原出版株式会社.2012.96P
著者/Rene Cailliet,著訳/荻島秀男.図説運動器の機能解剖.医歯薬出版株式会社.2003.110P
編著/中村隆一,著者/齋藤宏,長崎浩.基礎運動学第6版.医歯薬出版株式会社.2007.207P
原著/Carol A Oatis,監訳/山崎敦,佐藤俊輔,白星伸一,藤川孝満.オーチスのキネシオロジー身体運動の力学と病態力学[原著第2版].ラウンドフット.2016.133-135P
原著/D・A・Neumann,監訳/嶋田智明,平田総一郎.筋骨格系のキネシオロジー.医歯薬出版株式会社.2010.106,108,110-111P
著者/信原克哉.肩ーその機能と臨床第4版.医学書院.2012.21-22,45P
監修/青木隆明,執筆/林典雄.改訂第2版 運動療法のための機能解剖学的触診技術 上肢.メジカルビュー社.2012.125P
編著/整形外科リハビリテーション学会.改訂第2版 関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーションー上肢・体幹.メジカルビュー社.2014.11P
肩甲骨と鎖骨でつながる肩鎖関節
鎖骨によって肩甲骨が吊り下げられている、それが肩鎖関節です。
この肩鎖関節は胸鎖関節と同じように小さい関節ですが、肩甲骨の運動と関係を持っています。
また、動きやすいように安定性もあり、支えとしても活躍する関節です。
そんな肩鎖関節の構造と機能をみていきましょう!
【解剖】肩鎖関節は靭帯の補強によって強化されている関節
肩甲骨と鎖骨の関節面でできる関節、それが肩鎖関節。
胸鎖関節と同様に関節円板が備わっており、胸鎖関節とまではいかなくとも運動の自由度を確保できているのが特徴です。
肩鎖関節は靭帯による補強が強く、胸鎖関節以上に制限をつけられています。
そのため、肩鎖関節は可動域が全体的に狭くなっていて、よほどの外力が加わらないかぎりずれないような構成となっております。
そんな肩鎖関節の機能はなんなんでしょう?
次はそちらを見ていきましょう!
【機能】肩鎖関節は肩甲骨の制御や支点となる関節
肩鎖関節はさきほども書きましたが、靭帯によってかなり運動制限を付けられています。
ですが、これが悪いかというとそういう訳ではありません。
肩鎖関節はタイトルの通り、肩甲骨の制御や支点となる関節です。
それは、この靭帯によって補強されたことによる安定性からが理由の一つです。動きを狭くすることにより胸鎖関節や肩甲骨の動きを間接的に伝え、微妙なコントロールをしてくれます。
動きすぎると不安定で精密な制御は行えませんからね?
そのため、肩鎖関節は極端に動きを制限されるのと引き換えに肩甲骨の制御や支点としての役割を担うことができるのです。
【参考文献】
監修/竹内修二,著者/松村天裕.カラー図解骨のしくみ・はたらき事典.西東社.2011.26P
監修/富士武史,共著/河村廣幸,小柳磨毅,淵岡聡.ここがポイント!整形外科疾患の理学療法改訂第2版.金原出版株式会社.2012.95P
編著/中村隆一,著者/齋藤宏,長崎浩.基礎運動学第6版.医歯薬出版株式会社.2007.207P
原著/Carol A Oatis,監訳/山崎敦,佐藤俊輔,白星伸一,藤川孝満.オーチスのキネシオロジー身体運動の力学と病態力学[原著第2版].ラウンドフット.2016.138-139P
原著/D・A・Neumann,監訳/嶋田智明,平田総一郎.筋骨格系のキネシオロジー.医歯薬出版株式会社.2010.109,111P
著者/信原克哉.肩ーその機能と臨床第4版.医学書院.2012.21-22,44P
監修/青木隆明,執筆/林典雄.改訂第2版 運動療法のための機能解剖学的触診技術 上肢.メジカルビュー社.2012.112,120P
肩甲骨と胸郭をつなぐ肩甲胸郭関節
肩甲骨と胸郭によってつくられる存在していて存在しない関節、肩甲胸郭関節。
この関節は解剖学的には存在しない関節であり、機能的解剖学としての観点からいわれる関節です。
肩甲骨が肋骨に接しているだけのような状態なので通常の関節の構造とは異なります。
そんな肩甲胸郭関節の解剖と機能について紹介していきます!
【解剖】肩甲胸郭関節は肩甲骨と胸郭の間の接触点
肩甲胸郭関節は、肩甲骨と肋骨面によって構成される関節です。
解剖学的には正式な関節ではなく、肩甲骨と胸郭の接触点となります。
肩甲骨は胸郭の後ろにあり、縦の長さは2本目の肋骨から7本目の肋骨までです。
まあまあ大きい骨ですよね!
この関節としては珍しい形をとっているのが肩甲胸郭関節の特徴でありますが、その機能は重要なものとなっています。
さて、次は機能について見ていきましょう!
【機能】肩甲胸郭関節は空間での活動を行うのが得意な関節
肩甲骨は腕を胸郭に対して支える機能となっています。
この支える機能は特に腕を伸ばして転倒した際、衝撃吸収をして肩を守ることが可能です。
これが可能な理由としは、単純に肩甲骨と肋骨の骨だけで支えているというわけでなく、肩甲胸郭関節の周りにある筋肉が働くことでカバーしてくれます。
また、肩甲骨は腕を上げる際に胸郭上を滑って動き、上腕骨の動きにも合わせることで肩の広い可動域を確保してくれ、なおかつ胸郭から力がぐらつかないように肩甲骨を安定させる機能があるのが特徴です。
このように、ただ肩関節の付け根から骨で支えているというわけではなく、筋肉を利用して衝撃吸収したり、肩甲骨の固定をして安定させてくれます。
肩甲骨の役割がシンプルですが運動などでは大事な役割をしているんですね!
【参考文献】
監修/富士武史,共著/河村廣幸,小柳磨毅,淵岡聡.ここがポイント!整形外科疾患の理学療法改訂第2版.金原出版株式会社.2012.96P
著者/Rene Cailliet,著訳/荻島秀男.図説運動器の機能解剖.医歯薬出版株式会社.2003.108P
編著/中村隆一,著者/齋藤宏,長崎浩.基礎運動学第6版.医歯薬出版株式会社.2007.208P
原著/Carol A Oatis,監訳/山崎敦,佐藤俊輔,白星伸一,藤川孝満.オーチスのキネシオロジー身体運動の力学と病態力学[原著第2版].ラウンドフット.2016.139P
原著/D・A・Neumann,監訳/嶋田智明,平田総一郎.筋骨格系のキネシオロジー.医歯薬出版株式会社.2010.112P
監修/林典雄,筆者/赤羽根良和.肩関節拘縮の評価と運動療法.運動と医学の出版社.2014.20P
著者/山口光圀,福井勉,入谷誠.結果の出せる整形外科理学療法.メジカルビュー社.2012.13P
肩関節の代表格である肩甲上腕関節
人体で最も可動域が大きいであろう関節、肩甲上腕関節。
この肩甲上腕関節は肩甲骨と上腕骨の骨で構成される、まさに肩といえばこれ!のような代表的な関節です。
もちろん皆さんのイメージ通り、重要なのは当然であり、さまざまな機能を持ち合わせているのが特徴です。
ここでは、肩甲上腕関節の解剖と機能について紹介していきます!
【解剖】肩甲上腕関節は自由自在の球関節
肩甲骨と上腕骨によって構成される球関節、肩甲上腕関節。
人体で最も可動域が大きいといわれているがゆえ、その関節の接触面積は安定性に欠けているものです。
肩甲上腕関節は肩甲骨の関節窩と上腕骨頭によってできておりますが、非常に接触面が少なく、なおかつ腱板によって吊り下げられているのがこの関節の最大の特徴。
その理由は肩甲骨の関節窩が小さく、上腕骨頭との大きさと比べて
上腕骨頭:肩甲骨の関節窩→3:1
となっており、上腕骨頭はプランプランな状態です。
そんなユルユルな関節にどんな機能があるのでしょうか?
それを次に説明していきます。
【機能】肩甲上腕関節は手の位置の決定権を持っている関節
肩甲上腕関節は関節の構造だけでみるとただ不安定であることしかわかりません。
しかし、肩甲上腕関節はその関節の緩さを利用して関節の運動の自由度を確保しているのも事実なのです。
また、肩甲上腕関節は腱板や靭帯、腱などによって支えられていますが、それらの組織はただ関節を守ることが目的ではありません。
皆さんが何かを取ろうとしたときなど、どうやって手・指先を伸ばしますか?
腕を最初にあげますよね?
そして遠かったりしたらどうしましょう?さらに腕を伸ばしますよね?
このように何か人が目的を達成しようとするときに必要となるのが肩甲上腕関節の動きです。
肩甲上腕関節には手の位置の決定権を持ち合わせています。
肩甲上腕関節が機能しないと腕を上げて棚の物をとることができません。
手首や指先だけで棚の上は届きませんからね!
生活の上で家事をしたり、仕事をしたりするうえで手の位置、スマホの位置を操作するのは肩となります。
もちろん100%肩!というわけではありませんが・・・
このように肩甲上腕関節は肩を周囲の組織によって安定させ、コントロールすることを可能とします。
何気なく漠然と体を動かしていましたが、意識すると確かにそうですね!
皆さんも体の動きを感じてみましょう!
【参考文献】
監修/竹内修二,著者/松村天裕.カラー図解骨のしくみ・はたらき事典.西東社.2011.27P
監修/石井直方,著者/左明,山口典孝.カラー図解筋肉のしくみ・はたらき事典.西東社.2010.50P
著者/日野原重明.系統看護学講座専門基礎Ⅰ人体の構造と機能[Ⅰ]解剖生理学第6版.医学書院.2004.57P
監修/富士武史,共著/河村廣幸,小柳磨毅,淵岡聡.ここがポイント!整形外科疾患の理学療法改訂第2版.金原出版株式会社.2012.95P
著者/Rene Cailliet,著訳/荻島秀男.図説運動器の機能解剖.医歯薬出版株式会社.2003.106,115P
編著/中村隆一,著者/齋藤宏,長崎浩.基礎運動学第6版.医歯薬出版株式会社.2007.208P
原著/D・A・Neumann,監訳/嶋田智明,平田総一郎.筋骨格系のキネシオロジー.医歯薬出版株式会社.2010.114-115P
著者/信原克哉.肩ーその機能と臨床第4版.医学書院.2012.21P
監修/青木隆明,執筆/林典雄.改訂第2版 運動療法のための機能解剖学的触診技術 上肢.メジカルビュー社.2012.108,116P
編集/柳澤健.理学療法学ゴールド・マスター・テキスト2 運動療法学.メジカルビュー社.2011.307P
監修/林典雄,筆者/赤羽根良和.肩関節拘縮の評価と運動療法.運動と医学の出版社.2014.15P
胸骨と肋骨をつなぐ胸肋関節
胸肋関節は胸骨と肋骨によってつながっており、いくつもの肋骨が胸骨につながります。
胸骨はモテモテですね(笑)
そんな胸肋関節の解剖と機能を簡単に説明します!
【解剖】胸肋関節はほとんどが軟骨の結合
胸肋関節はかなりマイナーな関節です。
胸骨と肋骨の関節面となるのがこの胸肋関節となります。
この胸肋関節は一つだけでなく、複数あり、胸骨に肋骨が何本か集合して関節を構成していきます。
胸骨に対して2本目から5本目の間に関節があり、1本目と6本目、7本目は軟骨によってくっついているのが特徴です。
また、これらは靭帯によって外れないように補強されています。
【機能】胸肋関節は上腕骨の動きに合わせて動く関節
この胸の関節がどのように肩の運動に関与するのでしょう?
それは、肩を天井までまっすぐ上げきる直前から始まります。
胸を丸くしてから肩を上げてみましょう。どうですか?肩が天井にまっすぐ向いているでしょうか?
若干斜めになっていますよね?それでは上げきる前に胸を張ってみましょう!
どうでしょう?今度はさっきよりも腕が上がり天井にまっすぐ向くようになりましたよね?
このように、肩の運動には胸郭の運動が入り、特に肋骨の上がり下がりが関係してきます。
この胸肋関節の動きが弱いと胸が張りづらく腕も上がりません。そして、無理をすると肩や腰を痛めやすくなります。
胸肋関節は肩を上げる際の最後のシメとして必要なのが特徴なのです。
【参考文献】
監修/富士武史,共著/河村廣幸,小柳磨毅,淵岡聡.ここがポイント!整形外科疾患の理学療法改訂第2版.金原出版株式会社.2012.96P
訳者/越智淳三.解剖学アトラス第3版.文光堂.2007.36P
【結論】肩は複数の関節で動くONE TEAMだった!
お疲れ様でした!最後まで読んでいただきありがとうございます!
肩の動きってかなり複雑なイメージですね。でも一つ一つで見るとシンプルに動いているように見えます。
そうですね。肩は単体だと大きな力を発揮しませんが、それぞれの関節部位が協力すると幅がすごい広がるのが特徴です。そのため、肩の動きはチームプレーが不可欠なんですよねー
なるほど!さしずめONE TEAMというところですかね!勉強になります!
なので、肩を動かす際は付け根を意識するのではなく、体幹や肩甲骨を意識したほうが負担も少ないです。皆さんも腕を動かすときは意識してみてくださいね!
というわけで今回はここまで!お疲れ様でした!
また、次回の記事でお会いしましょう!
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