今回は変形性膝関節症について理学療法士が何を行っているのかを説明していきます。
前回は医師でしたが今回は理学療法士視点ですね!
理学療法士が運動処方するまえに何を基に考えていくのかを今回は述べます!
理学療法士が行う評価項目
理学療法士は十分な病態の把握と医師の診断を基に理学療法評価を行います。
変形性膝関節症では重症例でなければ基本的に手術は行わなく、保存療法という特に手術などを行わずに温存して治療が選ばれることが多いです。
その手段として理学療法があり、身体の状態などを評価して治療に反映させていくことが重要になってきます。
①どのような訴えがあり、患者の背景に何があるのか?
②どのように症状を軽くしていくのか?
③何が訴えの原因になっているのか?
これらを様々な検査・テストを通して症状を軽減、改善していくのが目的になります。
それではどんな評価項目があるのか一つ一つ説明していきます!
問診
変形性膝関節症は退行性変化という徐々に消耗によって悪くなっていく特徴があります。
問診ではその原因となりうる項目を見出して推論を立てていくのが目的であり、それぞれの問診の項目がどのように密接して関連していくのかを、理学療法士がひも解いていきます。
現病歴
現病歴とは、特にどういった状態・状況のときに症状が出現するのかを詳細に問診し、主訴との関連性を明確にしていきます。
現在の変形性膝関節症の症状を中心に、身の回りの変化や支障、心当たりのあることを細かく聴取していくことで本人の訴えとの関連性を明確にしていくのが目的です。
この時点で現在の症状の具合・重症度・経過・原因などを探ることでどこが、どのように症状を誘発していくのかを仮説として立てていきます。
既往歴
既往歴は、過去に何かしらのケガ・病気をしたことがあるのかを聞いていきます。
私が現場で見てきた変形性膝関節症の患者さんの多くは、何かしら既往や現病歴として抱えている人が多く、特にそのなかでも
・ぎっくり腰や腰椎ヘルニアなどの腰痛を発症したことがある
・過去に長期で入院してベッドでずっと寝ていた
・骨粗しょう症の診断を受けた
が多かったです。
基本的に高齢者が多いので何かしらの病気がきっかけで変形性膝関節症を発症することが多かったと感じました。
これら以外にも出産経験や尿失禁経験があるのかも聞くことはあります。
体幹の強さと膝関節の関連性は間接的に影響を及ぼす関係にありますので、それも踏まえて既往歴として聞いていき過去の疾患と関連しないかを考えて原因との関連を探って考えていくのです。
社会歴
社会歴の場合、自宅での生活様式や職業歴から膝関節へ与えるストレスを予想します。
現在の生活状態と症状発症前の生活状態を比較・検討することが重要であり、過去の職業や現在行っている作業などが変形性膝関節症の助長を招いていることも少なくないため病態と関連して考察していきます。
・生活様式:一軒家の構造、マンション、和式、洋式、活動範囲、バス・電車などの利用があるか?
・趣味は何をしているか?
・仕事:デスクワーク、力仕事、立ち仕事、業務時間など
一見関連なさそうな問診ではありますが家の階段の上り下りが多い、趣味が正座やダンスなどの膝に負担がかかりやすいものを行っている。
こういった場面から変形性膝関節症を発症してしまうことはおおいにあります。
そのため職業内容や家屋構造を知り推察することが重要にもなってきます。
痛みの評価
変形性膝関節症は退行性変化であり、急激に発症する疾患ではありません。
そのために複数の関節や組織に長い期間をかけてストレスを引き起こして痛みを訴えさせます。
理学療法士はこの痛みについて種類と一緒にどのような時に痛みが強くなるのか?逆にどうすれば痛みは楽になるのか?
どのようなストレスで痛みが出現するのか推測するためにこれらを知る必要があります。
例えばO脚の変形性膝関節症であれば、内側の痛みを訴えますがその要因として
①骨棘と滑膜の刺激
②固まってしまった内側の組織の滑膜の挟み込み
③骨棘や軟骨下骨の骨折
④半月板損傷
⑤腸脛靭帯への強いストレス
などがありますね。
これらが膝の痛みの原因を病態やストレステストから絞っていき、他の身体部位からの痛みの影響も考えながら評価していきます。
ここで重要なのは決してその状態が正常・異常かを判断するのではなく、どのような背景・きっかけからその痛みが出現したのかを詳しく考えて推察していくのが重要となります。
整形外科的テスト
整形外科的テストは、医師による診断の補助的検査として行います。
動きを制限する原因を特定した上で骨性・筋性・靭帯性・炎症性・関節包性の問題を判別するために行います。
変形性膝関節症に行う整形外科的テストは主に
①膝内反ストレステスト:外側側副靭帯の損傷
②膝外反ストレステスト:内側側副靭帯の損傷
③ラックマンテスト、前方引き出しテスト:前十字靭帯の断裂
④N‐テスト:前十字靭帯の不全
⑤後方引き出しテスト:後十字靭帯の断裂
⑥サギングテスト:後十字靭帯の損傷
⑦マックマリーテスト:半月板の損傷
⑧アプレー牽引or圧迫テスト:牽引は靭帯性病変、圧迫は半月板病変
⑨膝蓋跳動テスト:腫脹の有無
など様々な方法によって判別していきます。
これらのテストは数値などが表示されるわけではなく、理学療法士の主観や経験が求められます。
そのため理学療法士には判別するための技術や感覚が問われる評価となるのです。
形態測定
形態測定とは手足の長さや太さを測り栄養状態や筋量を見ていくものです。
変形性膝関節症の場合、骨形状の変化に伴う足の長さの違い・腫脹・筋萎縮などを把握します。
変形性膝関節症の初期では大腿骨が外に弯曲していくという報告がありますが、これは太ももの長さに影響を与えるため形態的変化の要素ともなります。
初期の変形性膝関節症では生理的外反が無くなってしまうため、足全体が長くなることが考えられるため、念頭において評価をします。
腫脹や筋萎縮に関しては特に太ももの太さを計測してその程度を判断します。
どうやって判別していくのかというと
という風に判別していきます。
実際には大腿に存在する他の筋肉の影響も考えなければならないため筋肉の配置、触診を含めて理解して判断していくのです。
関節可動域
変形性膝関節症では膝関節の屈伸の制限と痛みを伴う場合が多いです。
膝関節の運動において大腿骨や脛骨が回旋という捻じりの運動が含まれますが、この捻じりに制限が生じます。
この捻じりの制限が発生してしまう原因として
骨構造や靭帯の制動が破綻することで、筋肉の過剰な制御コントロールが行われるからです。
これによって膝蓋骨の滑りが悪くなってきます。
そのため関節可動域では
①股関節の可動域
②距骨下関節
③足部
④肩甲帯
⑤脊椎
⑥骨盤帯
これらの可動性を評価していき、制限が生じているかを確認していきます。
これらの可動域を見ていく理由として
どの程度可動性が出るか?というだけでなく
どの程度その部位の動きをコントロールできているかといった点にも着目して考えていきます。
膝以外の部位がコントロールできていないことで最終的に膝関節でコントロールを補っている可能性も考えることができるため、他の部位の関節可動域測定も重要となってくるのです。
筋機能評価
筋力の評価では、理学療法士が手で抵抗を加えたり、機械で測定することで、筋肉のバランスを判定したりどこの筋肉にどれくらいの力があるかを見ていきます。
その際に各個人の左右差、関節を曲げる筋肉と伸ばす筋肉などのバランスに問題が生じていないかを確認します。
変形性膝関節症の場合であると
これらが特に臨床上では多く見られます。
もちろんO脚の変形かX脚の変形かで萎縮する筋肉は変わっていきますので全てが問題になることは少ないです。
特に大腿四頭筋の萎縮、低下の問題に関しては変形性膝関節症の特徴的な所見でもありますので、筋機能を評価していく際には大腿四頭筋の筋力は高確率で見ていきます。
ただ、筋力があってもそれを動作の中でしっかり使えているかを見ていくことの方が重要であり、評価する理学療法士が骨の偏りに矯正を加えた状態で筋肉が発揮できるかを考えて動きを観察します。
そのため、一つ一つの筋肉の評価をするだけでなく、全身的な動きから膝の筋肉がどのように作用しているかを観察・分析して膝関節の役割をとらえて所見を得ることが多いです。
なので、膝関節以外にも
この複数の関節周囲の筋肉も鑑別したうえで総合的に膝関節の筋機能を評価していきます。
感覚について
膝関節の感覚は人や物との距離感や方向を調整するのに重要な部分になります。
変形性膝関節症ではこの感覚機能が衰えてきてしまう傾向が認められるという報告がされています。
感覚の中でも重要なのが膝関節の内部に多く存在する固有感覚です。
固有感覚とは、触れられた感覚や痛みの感覚、熱い冷たいの感覚とは別のものです。
具体的には関節が今曲がったままなのか、伸びたままなのかを見ないで判断できる位置覚と
関節が曲げ伸ばしの動きをしているのを見ないで判断できる運動覚を指します。
この固有感覚は関節周囲もしくは内部に存在し
、滑膜・関節包・靭帯・筋肉・腱・皮膚に多くちりばめられています。
一般的に高齢者においてはこの固有感覚が低下するということが指摘されており、変形性膝関節症ではさらに骨の変形による構造の変化や筋肉のバランスが崩れることで固有感覚に何らかの障害が発生して低下させます。
この固有感覚というのは自分自身では意識しなければ分からないのですが、変形性膝関節症の患者さんでは膝が変形しているという自覚はありますが、どれくらい変形して、どのような歩き方をしているのかというのが分からなかった患者さんは多かったです。
固有感覚が低下していることから、脳からも誤った歩き方を修正しようとする指令も出てこなくなります。さらに脳はそれが正しい歩き方とゆがんだ認識をしてしまうため誤った歩き方を習慣化させてしまうのです。
「あら?そんなに歩き方変になってるの?」というのは何度も臨床では聞きました。そのため歩き方の認識も改善していかなければならないことはよくありました。
このように様々なことから固有感覚が低下しているので、原因を判別するのはなかなか難しく、単純に固有感覚の検査をしても明確になりにくいです。
そのため実際の評価としては身体全体から推論していくことが必要となります。
下肢アライメント
下肢アライメントを見る目的は変形性膝関節症においてO脚・X脚の程度を見ていくことですが
、変形の程度を見ていくことと同時に大腿骨・脛骨の捻じれなどの偏りを評価し、筋肉・靭帯のバランス状態を大まかに把握することが可能です。
この時に理学療法士は体重が掛かっていない寝ている膝の状態と、体重が掛かっている立っている状態を比較していきます。
膝関節の変形程度から筋力低下の度合い、靭帯のゆるみを他の整形外科的テストや筋機能評価と合わせて推論を立て、運動療法を処方していくのです。
姿勢・動作分析
理学療法士が最も能力を発揮するのがこの姿勢・動作分析になります。
「膝の変形なんだから膝の動きだけ見てればいいんじゃないの?」
そういうわけにはいきません。
この姿勢・動作分析で見ていくのは膝以外の部分の上半身や下半身がどのような姿勢をとっているか?
どのような歩き方をして膝に負担をかけているか?
膝以外の観点から考えていくのが目的になります。
・患者さんが痛みに対してどのような姿勢・歩き方で対応しているか?
・腰痛や骨折による制限が姿勢・歩き方に反映されてないか?
・膝周囲以外の筋肉の筋力低下や関節可動域制限が影響を与えてないか?
などなど
姿勢・動作分析においては膝関節の動きを踏まえたうえで他の関節による影響を考えて
なぜそのような姿勢・動作になっているか?
疑問を追求して原因を追究していくのが姿勢・動作分析を行う目的となります。
変形性膝関節症は確かに膝関節の疾患ですが必ずしも膝が根本的な原因とは限らないです。
腰痛から膝の変形を生じた患者さんもいますし、股関節の骨折の影響により変形性膝関節症になってしまう患者さんもいらっしゃいます。
今まで述べてきた問診や検査内容を踏まえてどこの部位が由来で変形性膝関節症を発症したのか?
そこを考えていくのが理学療法士の仕事でもあります。
結論:医師の診断の上で問診・評価で原因追究するのが理学療法士の役割
今回は理学療法士の話でしたがどうでしたか?
この原因が分からないままだとリハビリの効果は小さくなりますね。
結局膝関節だけに運動処方しても一時的になりやすいということなんですねー
むー・・・奥が深いです・・・
そのため我々理学療法士や医師が考えていかなければならないのです。
さて、次回は変形性膝関節症の予防になります!
次の回は皆さんも気になるところになりますね!
私も気になる情報なので楽しみです!
とりあえず頑張って記事に挙げてみます・・・
ではまた次回!
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